今回は優秀なEAの見つけ方をお話します。
EAは現在、いくつものマーケットで無数に販売されています。
結論から言うと、購入前にテストができないEAにお金をかけることはお勧めできません。
なぜなら開発者もしくはパッケージ販売元の広告宣伝を信じるしかないからです。
動画やホームページでそのEAを評価・検証してる人もいるので、その内容が信用できるという確信が持てればそれを判断基準にすればいいのですが、大抵の場合は販売元のアフィリエイトパートナーになっていることが多いのが実情です。
紹介者は販売元からお金をもらえる仕組みになっているので「購入予定者のための中立な立場による正しい検証結果であること」が保証されていません。
開発者から正確かつ十分なバックテスト結果が提供されていれば問題ありませんが、宣伝文句のみを根拠にEAに大金を払うのは慎重になるべきです。
ではテストができるEAにはどんなものがあるのでしょうか?
テストできるEA
- 開発者自ら詳細なテスト結果を公表している(非常に珍しいケースですが)。
- 購入前にデモ版で試すことができるEAは自分でテストができる。
- 無料のEAはEA入手自体にお金はかからないのでこれもテストができるEAとみなせる。そのまま実運用に使えるが、それでもリアルマネーを投入するのはデモ口座で十分そのパフォーマンスを確認してからにすべき。
まずはこれらに合致したEAを前提条件として、優秀なEAを見分ける5つの視点を見ていきましょう。
開発者が利用者にEAを無料提供できる仕組み
ところで開発者は何か月も苦労して開発したシステムをなぜ無料で利用者に提供できるのでしょうか?
わかりやすい仕組みとしては以下がありますが、表に出ていない方法で開発者にバックされるケースも多々あります。
アフィリエイト収入型
代表的なものはFXブローカから直接提供されるアフィリエイト収入です。
国内ブローカの場合
国内ブローカでは主に一定条件(口座開設者が10ロット以上実際に取引を完了したら、など)を課して新規口座開設ごとに1万円から2万円ほどの紹介手数料を出しています。
口座を開設してもらえば終わりなのでEAの実効性のレベルは保証されていません。
海外ブローカの場合
一方、海外ブローカでは、口座開設者の取引に紐づけしてトレードごとの手数料を一部キックバックしており、開発者はその収入を見返りとして無償でEAを提供しています。
開発者としては長く使い続けてもらわないと儲からないので、利用者と開発者の関係がWin-Winとなり必然的に良いEAが入手できる環境になっています。
無料EAの開発者がEA取得の条件に海外業者の口座開設を義務付けている場合、優秀なEAである可能性が高いです。
優秀なEAを見分ける5つの視点
テストができなければ優秀なEAを見分けることはできませんので、ここではテストができるEAに限定して議論します。
資産を増やせるか?
EAで資産を運用するのは資産を増やすためであり、減らすためではありません。
もし本当に資産を増やせるEAであれば開発者自身もそのEAで運用しているはずなので、そこを確認してみましょう。
以下に資産を増やすことに貢献するEAの機能とバックテストの結果で注目すべきポイントをまとめておきます。
バックテストの具体的な方法については以下の記事で解説しています。
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MT4でFXのEAバックテスト(検証)のやり方と最適化の方法
MT4・MT5で利用できるEAのバックテストとは、過去の特定の期間における取引データに基づきEAのパフォーマンスを測定し、EAの有効性をテストすることです。 その性格上、過去における有効性はテストでき ...
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資産を増やすEAの機能
建値発動型トレーリング・ストップ
通常のトレーリング・ストップの発動タイミングはストップ・ロスと同じレベルなのでレートが逆行すれば当然損失で終わります。
しかし、発動のタイミングをレートが建値を超えてからに設定できれば万一レートが逆行してもトントンで終えることができます。
約定時は通常のストップ・ロスを有効にしておきます。
トレードスタイルによっては「ストップで引っかかるのは必要なコストだからそれは覚悟してテイク・プロフィットで決済するのが俺の流儀だ」と考える方にはこの機能は必要ありません。
資産増を示唆する評価項目
資産曲線
MT4でEAのバックテストをした際に、「グラフ」というタブを見ると青い実線の折れ線グラフで初期口座資金の残高の推移が表示されます。
簡単に言えば右肩上がりになっていれば資産が増えていることになります。
有料EAの広告欄に掲載されているバックテスト結果は過剰最適化されているのが当たり前なので、自分でテストできるのであれば、いくつもの違った期間でテストを繰り返してみることをお勧めします。
プロフィット・ファクター
プロフィット・ファクターは「総利益」を「総損失」で割り算したものですが、これによって一定の利益を得るための資金効率が図れます。
プロフィット・ファクターは総取引数が100回程度あれば1.5以上が望ましいところですが、2.0以上あれば安心です。
資金を守れるか?
資産が増えそうだと思えたら今度はその資産を守れそうかどうかに注目してください。
最終的に当初資産よりも増えていたとしても、その途中で10分の1程度まで残高がなくなっていた場合、EAを信じてさらに使い続けられるほどの精神力を持った人は普通いません。
資産を守るEAの機能
資金管理機能
一定の損失額に達したら停止する機能。
この設定をできなければ資金がゼロになるまで損失を繰り返すことになるので、EAになければ定期的に自分で確認しておく必要があります。
ロット調整機能
残高に対するロットの割合を特定の比率で設定する機能。
設定レベル無制限のストップ・ロス設定機能
通常約定時に設定できるストップ・ロスやテイク・プロフィットの幅にはスプレッド分の制限がありますが、この機能があればEAのロジックにより任意のレートにストップ・ロスを設定することができます。
評価項目とその見方
最大ドローダウン
計算時点より前の期間での最大資産と比較して最も大きなマイナスの幅のこと。
実運用で最大どのくらいまで資産が減る可能性があるかをみる項目です。
ここで示された金額あるいはパーセンテージの1.5倍から2倍は見積もって、おきそれでも資産がゼロにならないだけでなく自分が精神的に耐えられるかを想像してみてください。
通常20%くらいまでが許容範囲とは言われていますが、この数値は少ないに越したことはないのでなるべく数値の低いEAを選んでください。
有効証拠金残高
最大ドローダウンとほぼ同じ意味ですが、決済をしていないのでレポートには出てきません。
バックテスト時のグラフタブで青い実線とともにある緑の細い線がこれに当たります。
青の実線は決済後の資産残高を表しますので、そのレベルとの乖離が少ない方が含み損も少ないという意味になります。
※ここで紹介した機能がEAに搭載されていなかった場合、インジケータダウンロード館でツールとして入手することもできますし、オーダーシステム社でEAとして発注することもできますので、ご興味のある方は一度各社に問い合わせてみてください。
目的に合っているか?
この点についてお話する前に軽くEAを使うメリットとデメリットについて触れさせてください。
EAを使うメリット
EAのメリットとして挙げられるものはたくさんありますが、その代表例として、まず画面に張り付いて常にチャートとにらみ合ってなくても済むという点があります。
システム環境を整えることによって皆さんが忙しく働いているときも、夜ゆっくり休んでいるときも24時間稼働させ続けることができるので、相場の細かいエントリーチャンスを逃すことがありません。
次にトレードの最大の障壁と言われる感情的なトレードを一切排除することができる点があります。
一旦決めた損切のルールを無視して口座破たんになるまでじっくり画面を眺めることになることもなく、せっかくのチャンスでいいエントリーをしてもルールを無視してちょっとの利益でクローズしてしまうこともないので安心して資産を積み増していくことができます。
EAを使うデメリット
メリットの1点目を実現するための犠牲としてEAを稼働させておくPCを24時間止められなくなることです。
まず電気代かかりますよね。
そして自分の意志で止めなくてもOSの更新による定期的な強制再起動やネットワークの不調等により意図しないところでシステムが止められてしまう可能性があるのでその対策に結構手間がかかること。
お金で解決しようとすればVPSを契約するという選択肢もありますが、少しでも余分なお金があれば証拠金に入れておきたいですよね。
そして2点目はこれもメリットの裏返しになりますが、感情的なトレードを廃するということは、ギャンブルとしてとらえている方にとってはちっとも面白くなく、ワクワクドキドキという世界からは遠ざかってしまうという点になります。
ドキドキしないで着々と資産が増えてくれればいいと思う方が大半だと思いますが、中にはそういう体質の方もいらっしゃいます。
立ち位置によって違う利用者の目的
つまり目的にあっているかどうかというのはその方の立ち位置によってずいぶんと変わってくるんですね。
仕事でEAを運用に使っている方は定期的に証拠金を引き出す必要があるかもしれません。
そういった場合に長期で含み損を抱えてしまうようなEAよりも、勝率は60%くらいであっても毎日何回も決済しその都度勝ち負けを繰り返しながら10%の勝ち越し分を着実にためていくタイプのEAのほうがいいかもしれません。
逆に証拠金を短期で引き落とす必要のない個人の方であれば、多少含み損が長期で続いても勝率が高く多くの利益を見込める長期のトレンドフォロー型EAが向いているかもしれません。
そういった方には最近流行っているスワップ獲得目的でのグリッド型。それにドルコスト平均法、マーチンゲールなどの投資法を織り交ぜたEAもお勧めです。
自分がどういったタイプなのかわからない方も多いはずなので、まずはいろいろ試してみて一番心地よいものを選ぶのがよろしいかと思います。
評価結果に信頼性はあるのか?
プロモーションサイトのカラクリ
プロモーションサイトでよく見かける「1日○万円の儲け」「勝率98%!」などというコピーをうのみにしてはいけません。
ちょっと考えればわかると思いますが、金額はロットを上げていけば稼いだpips数が少なくても上がります。
皆さんが実際にかけるロットに置き換えて金額を計算する必要がありますが、バックテストの結果を公開せず金額だけを誇示するプロモーションページには気を付けましょう。
バックテスト
市販のEAのプロモーションサイトにはバックテストの一部の画面が掲載されているケースがありますが、よく見える場合はテストの対象期間をチェックしてみてください。
もし終了日が販売開始された日の1年も2年も前の日付であれば、バックテストの結果が良かった期間を部分的に抜粋されている可能性があります。
一番いいのは自分でテストできるEAなので、販売元にデモ版の使用を依頼できるようであれば、購入前に一度自分でバックテストすることを強くお勧めします。
長期間のフォワードテスト
バックテストの結果が良くても実運用(フォワードテスト)してみるとボロボロということはよくあることです。
myfxbookというサイトでは自分が運用している口座をリンクさせ、その結果をリアルタイムで公開できるサービスを無償で行っています。
myfxbookでフォワードテストを公開している開発者も結構います。特にリアルマネー口座で運用している開発者が多く、フォワードテストで証明したい本気度がうかがえます。
大金をかけて購入するEAであれば3年くらいはフォワードテストの結果を見て、安心できれば購入を決断するくらいの慎重さがあってもいいと思います。
ウォーク・フォワード・テスト
フォワードテストがバックテストよりも信頼性が高いことは簡単に理解できると思いますが、その最大の弱点は時間がかかるということです。
3年間のフォワードテストの結果は3年後を待たなければなりません。
この弱点を補い、バックテストよりも信頼性の高いものがウォーク・フォワード・テストです。
これは通常の最適化のために使った期間をイン・サンプル期間とし、そのパラメータを使って隣接する最適化で使っていない期間(アウト・オブ・サンプル期間と呼ぶ)をテストし、アウト・オブ・サンプル期間のパフォーマンスがイン・サンプル期間のパフォーマンスの50%以上(ウォーク・フォワード効率)になればその戦略は実運用にも耐えうると判断するテスト法です。
実際には期間を少しずつずらしながら複数のアウト・オブ・サンプル期間で計算するので、通常のバックテストと比べると多少手間がかかります。
ですが、リアルタイムの相場データを使っているわけではないのでフォワードテストに比べ遥かに高速、かつバックテストのみの場合と比べ遥かに信頼性のおけるテスト結果が得られるテスト法になります。
サポートは充実しているか?
5つの視点の最後はサポート体制です。サポートは手厚いことに越したことはありませんが、販売元の立場で考えると如何に手離れをよくするかということがコスト削減のポイントになります。
メンター型サポート
一番手間がかかるのは開発者自身が直接購入者をサポートするメンター型サポートです。
正確にはインストール作業などの誰でもサポートできるところは販売元の会社が行い、ロジックの説明など中身について深く理解していなければ答えられないところを開発者がサポートする、という役割分担をしているところが大半です。
メンター型でも一風変わったサポートをしている事例としてFAP Turboという製品が過去にありました。
これは開発者でもなく、販売元でもない一利用者がその製品で大きく資産を増やし製品にほれ込み、いわば恩返しという意味合いで(有償でしたが)開発者の同意を得て、購入者にコンタクトを取り、EAの設定の仕方や停止させるタイミング、結果が出ないときのメールによる精神的サポートなどを請け負ってやっていました。
当然満足度は3つのタイプのサポートの中では最高のものです。
コールセンター型サポート
次に充実しているサポートはコールセンター型サポートです。開発者はタッチしていないので尋ねられる内容は主に設定作業がメインになります。
問題が起きた場合それがプログラムに原因があれば当然開発者が解決にあたりますが、それでも利用者とコミュニケーションをとることはなく解決までに時間がかかります。
FAQ型サポート
最後のタイプは人が介在しないFAQ型サポートです。
よくある質問とその回答というのがその意味ですが、個別に質問ができず自分が困っている質問がよくある質問のリストになければ販売元に連絡し応えてもらう形になります。
サポートの専任担当者を置くことができない販売元なので通常コールセンター型よりも時間がかかります。
購入前に販売元とコミュニケーションが取れる場合は、サポート体制についてチェックしておくといいでしょう。
最後に
5つの視点をまとめると「自分に合ったEAをいくつか選定し、信頼性の高いテストを実施し、その結果から資産を守りながら、安全に増やしていけるEAを見極め、サポート体制から購入後も安心して使い続けることができる販売元を選ぶ」ということになります。
こう書くと一見大変そうで、事実やることもそれなりにありますが、それも資産を安全に増やしていくための道なので資産が増えた後のことを想像し、楽しみながらやってみてください。