フィボナッチ数列とは、13世紀のイタリアの数学者フィボナッチが発表した数列のことで、1、1、2、3、5、8、13、21、34と直前の2つの数字の和が続いていく数列のことだ。
どの数も次の数に対しての比が0.618に近づいていき、どの数も直前の数に対しての比が1.618に近づいていくのが特徴。
0.618:0.382は黄金分割と呼び、1.618:1の長方形を黄金長方形と呼んでいる。
これらの比率は人間が審美上最も心地よい比率であると言われ、古代エジプトのピラミッドにフィボナッチ比率が使われ、和音の周波数となっているほか、自然界の現象にも多く出現し、銀河の星雲、カタツムリの殻など、すべての自然界を支配する比率であるとされている。
このことから、相場にも影響があると考えられ、FXなどのテクニカル分析でもフィボナッチを使ったテクニカル分析がよく使われているのだ。
フィボナッチといっても、トレードでの使い方は実にさまざま。
例えば以下のようなテクニカル分析がある。
- フィボナッチ・リトレースメント
- フィボナッチ・エクスパンション
- フィボナッチ・エクスターナル・リトレースメント
- フィボナッチ・タイムゾーン
- フィボナッチ・ファン
目次
フィボナッチ・リトレースメントでエントリーポイントを見つける
フィボナッチ・リトレースメントではどこで押し目が終わり、再びトレンドに転換するのかを予測することができる。
つまり、押し目のエントリーポイントがフィボナッチ比率によって分かるということだな。
MT4では画面上のツールボックスのFと書いてあるボタンをクリックし、上昇トレンドの場合は上昇の1つの波の安値をクリックし、高値までドラッグするとラインが表示される。
MT4では0.0、23.6、38.2、50.0、61.8、100.0の6本のラインが表示されるぞ。
このチャートでは、上昇トレンドであることを認識したので、第1波の安値から高値を設定し、フィボナッチ・リトレースメントのラインを表示させた。
調整波の押し目がどこになるのかを探るので、目標値としては、23.5、38.2、50.0、61.8、100.0が候補として上がる。
候補がありすぎるので、フィボナッチ比率を採用しているエリオット波動の戻り率を確認してみるぞ。
まず確認することは、この上昇は上昇トレンド一番最初の上昇で、トレンドの起点であるということだ。エリオット波動でいう第1波だな。つまり、これから見るのは調整波の第2波の終点ということになる。
エリオット波動では第1波に対する第2波の修正の修正率は50~62%の修正率になることが多いとされている。この修正率はフィボナッチでいう0.382、0.5、0.618とされている。
このことから、38.2、50.0、61.8のどれかのラインで反転すると予測ができる。言い換えれば、この3つのライン上がエントリーポイントということだ。
このラインに到達して、実際にローソク足が反転し再び上昇したらエントリーだ。
フィボナッチ・エクスパンションで利食い目標を見つける
買いポジションを持ったらこの上昇波がどこまで伸びるのか知りたいよな。そして一番いいところで利食いしたいよな。
2番目の上昇の上げ幅は主に
- 最初の上昇と同じ上げ幅になる
- 2番目の上昇が1番目の上昇の1.618倍になる
ことが多くなる。
普通の波なら同じくらいの値幅で上昇、勢いがある時は1.618倍くらいまで伸びる。
このように、フィボナッチ・エクスパンションでは最初の波と押し目が分かれば次の上昇のゴールが分かるわけだ。
フィボナッチ・エクスパンションはMT4の挿入タブからフィボナッチを選び、エキスパンションを選ぶ。
トレンドの起点をクリックしたら、高値までドラッグし、次は押し目までドラッグする。やり直しは赤い点線の先端に四角印があるので、これをダブルクリックすれば点線を移動させることができるぞ。
フィボナッチ・エクスパンションを使うタイミングは、トレンド発生後第1波の後、調整(第2波)があり、反転して再びトレンド方向に動き出した第3波が始まったタイミングでエクスパンションのラインを引く。
そうするとこのチャートのように、第1波の上昇幅をもとにした、第3波の目標値がラインで示される。
第3波の利食いタイミングについてはいくつか候補があるが、トレンドの波のタイミングによって推進波の1波、3波、5波ではそれぞれ収まりやすい幅の率があるのだ。
これについてもリトレースメント同様、エリオット波動を参考にすると良いぞ。
第3波は第1波と同じか1.618倍になりやすいので、チャートでラインが引かれている100.0%ライン上か161.8%ライン上を利食い目標として定める。
結果を見ると目標値は161.8%で合っているし、その他100.0の水準で一度波の勢いが落ち着いているのがわかる。
フィボナッチ・エクスターナル・リトレースメントで利食い目標を見つける
フィボナッチ・エクスパンションでは1番目の上昇の幅から次の上昇幅の目標値を求めるものだったが、このフィボナッチ・エクスターナル・リトレースメントでは上昇幅ではなく、押しの値幅から目標値を求める。
最初の上昇の後の押しの値幅に対して、その次の上昇がどれくらいになるのかを推測する。
押し(調整波)の値幅にたいして、ふつうは
- 1.618倍の値幅で上昇する
- 勢いがある時は2.618倍上昇する
のが一般的だ。
エクスターナル・リトレースメントの引き方は、フィボナッチ・リトレースメントの時と同様に画面上のツールボックスのFと書いてあるボタンをクリックする。
そして今度は第1波の高値をクリックし、押し目(第2波)の底値までマウスで赤い点線を伸ばしてラインを表示させる。
次の上昇は調整波の第2波の1.618倍になることが一般的なので、161.8%のラインを利食い目標とする。
チャートを確認すると、161.8%ラインで2回押し下げられているな。かなりぴったりとはまった感じだ。
結果的には261.8%ラインまで到達しているが、このチャートの場面では161・8%がイグジットポイントとして妥当と言えるだろう。
フィボナッチ・タイムゾーンで相場サイクルの転換点とトレンド転換を探る
これまでは価格が「いくらまで」上昇・下降するのかという事に着目したフィボナッチのテクニカル分析を見てきた。
それに対して、フィボナッチ・タイムゾーンは時間軸を対象にして、フィボナッチを使い「いつ」、底値・天井になるのか予測するのに使う。
MT4での引き方はこれまでと同様だ。
MT4の挿入→フィボナッチ→タイムゾーンで表示される。
最初は0のライン1本だけが表示されるので、ローソク足のすぐ下の赤い四角印からマウスオーバーして最初のフィボナッチポイントを定めれば、それ以降の線は自動的に表示される。
チャートを見ると、タイムゾーンの中で1つの相場の流れのようなものがあることが分かるな。
最後の方では明らかな下降トレンド局面の後、ラインを境にゆるやかに下降しながらもほぼ横ばいの局面に移っている。
このように、フィボナッチ・タイムゾーンでは次に天井・もしくは底に到達するのはいつになるのかを予測することができる。
ポイントは「天井または底」に到達する目安だということだ。
相場サイクルでは底値から底値、天井から天井で1つのサイクルとなるが、フィボナッチ・タイムゾーンが線を引くのはその両方で、1つのサイクルを示したものではないことを注意してくれ。
天井も底もフィボナッチのポイントとしてタイムゾーンを表示することで、トレンド転換のタイミングを予測することができるぞ。
フィボナッチ・ファンでトレンドラインを引く
フィボナッチ・ファンとは、相場の勢いをフィボナッチ比率を利用して測る分析手法だ。
フィボナッチ・リトレースメントやエクスパンションは水平線を引いて目標値を予測するものだったが、フィボナッチ・ファンでは斜めの線を引いてその角度によってトレンドの勢いを見る。
フィボナッチ・ファンは通常のトレンドラインと同じようにサポート、レジスタンスとして機能する。
そのフィボナッチ・ファンのラインを使って押し目買いと戻り売りの目安として使う方法がある。
表示方法はこれまでと同様、挿入タブ→フィボナッチ→ファンだ。
トレンドが発生したらフィボナッチを引き、どのラインがサポートラインとして機能しているのかを見る。
①このチャートでは、50ラインがサポートラインとなっているので、50ラインにタッチしたら押し目買いをする。
②損切りは、今サポートとなっている50ラインを割り込んだ場所で行う。ただ、トレードスタイルと相場の状況によっては、その下のラインの61.8ラインを割り込んだらと決めても大丈夫だ。
また、フィボナッチ・ファンをブレイクしたことによって、トレンドの勢いが弱まってきたことを察知することもできる。
通常真ん中の50ラインの上を推移してきた価格が50ラインを割り込み、61.8ラインの上を推移するようになった場合、これまでのトレンドの勢いが弱まっているということを確認することができる。
実際にチャートで確認してみよう。
上昇トレンドが発生しているチャートにフィボナッチ・ファンを引いてみた。緑色のラインの一番上が38.2、真ん中が50、一番下が61.8だ。
トレンド発生当初は38.2ラインの上を推移していて勢いがあることが分かるな。
やがて38.2ラインを割り込み、50ラインの上を推移した後、50ラインを割り込んで61.8ラインがサポートラインに変わっている。
50から61.8ラインまで傾斜が緩やかになったことにより、トレンドの勢いが弱まっていることが確認できる。
最終的に61.8ラインを下方ブレイクして上昇トレンドが終了していることが分かる。
このように、トレンドの起点から見てサポートラインが下がってくることにより、トレンドの勢いを観察することができるのだ。
フィボナッチの効果的な使い方
今の相場の状態が上昇トレンドなのか、下降トレンドなのか、レンジ相場なのかを認識してからフィボナッチを使う。
トレンド中であれば、そのトレンドの起点を見つけてフィボナッチを引く。
一般的にフィボナッチはレンジ相場では使えないと言われているので、レンジ相場での使用は控えるなどしてくれ。
また、フィボナッチをたくさん引いて、線が集中する場所を信用度の強い場所として意識するという活用法もあるぞ。
このチャートにはフィボナッチ・リトレースメント、エクスパンション、エターナル・リトレースメントの水平線を同時に表示させている。
かなりごちゃごちゃしているが、線が密集している価格帯があるのが分かると思う。オレンジ色で囲った部分だ。
線が重なる場所は意識されるポイントなので、ここを目標としてエントリーポイント、イグジットポイントの目安とするという方法もあるぞ。
フィボナッチで逆張りをする方法
これまでフィボナッチを使った順張りのトレード方法を紹介してきたが、逆張りトレードに活用することも可能だ。
フィボナッチを使って逆張りのトレードをするときにはその時のトレンドの向きと強さを確認してから行うことが大切。
現在の相場が緩やかな上昇トレンドの場合は、上昇の調整波の部分でフィボナッチのラインにタッチする部分で逆張りの買いを入れる。
反対に緩やかな下降トレンドの場合は、下降の調整で上昇した時のフィボナッチのラインにタッチする場面で逆張りの売りをする。
このチャートは下降トレンドだな。ここにフィボナッチ・リトレースメントを引いてみた。
もともとリトレースメントは押し目買い、戻り売りを探るのに使用するので逆張りでも十分効果を発揮できるぞ。
ただ、逆張りといっても、トレンド方向にエントリーするので、この場面ではラインにタッチしたら売りエントリーを行う。
トレンドが強力に角度を付けて上昇または下降している強いトレンドの時は、調整の可能性が弱く、フィボナッチを使った逆張りにはおすすめできないので、トレンドが45度くらいの角度を付ける緩やかなトレンドで行う。
フィボナッチで注意する点
フィボナッチは確かに森羅万象のさまざまな現象に当てはまり、相場の中でもかなり当てはまっていて使えるテクニカル分析だ。
しかし、相場の現在の状況を確認しないまま、フィボナッチのみを信じてトレードすることはおすすめできない。
相場のトレンドの方向を確認してから使うことはもちろん、自分のテクニカル分析の補助的な役割として利用するのがベストだ。